熊本の農業

ひと朝だけしか咲かない花 奇跡のズッキーニ
豊福 正光さん / 球磨郡 相良町

2021.12.31

ズッキーニのシーズンを迎えた球磨郡相良町の川辺地区、
川辺川からほど近いハウスに生産者さんを尋ねました。
早朝はあたり一面、幻想的な霧に覆われていましたが
太陽とともにのどかな風景と青空が広がります。

 

ズッキーニのシーズンは春作と秋作の2回

 JAくま管内では、約80軒の生産者さんがズッキーニ部会に名前を連ねています。高齢者にも作りやすい軽量野菜の普及ということでJAくまも力をいれており、出荷されたズッキーニは関西、中京あたりまで流通していきます。
 豊福さんも17〜18年前にJA職員からの紹介でズッキーニを育てはじめました。「となりの宮崎県が日本一の産地で、昔はきゅうりが多かったのですが、この地域にも注文がくるようになり、それからどんどん増えました。現在は毎日、10aあたり12〜13本入りで200ケース程度の収穫を行っています。」

はさみで素早く収穫を行い、柔らかい表面に傷がつかないよう細心の注意を払う。スピーディな収穫のためにまずは長めに切り、箱詰め前に再度1センチ程に切り返して長さを揃えるという。
ハウスから数百mの近くを流れる清流川辺川。水と空気がとてもきれいで、野菜を取り巻く環境は素晴らしい。「実はハウスには水がきてないので、川の近くへ月に3回から4回、大きなタンクで水汲みにいきます。これがまた大変な作業ですが、ズッキーニは水の管理がとても大切で、水の量が足りなければ表面のハリやツヤに圧倒的な差がついてしまうんです。」

 

夜明けに咲き、昼前に萎む花 受粉のタイミングは数時間だけ

 「咲いている花は今日だけの花なんです。夜明けに一斉に咲き、午前10時ごろには萎んでしまうんですよ。同じ花がもう一度開くことはありません。交配のタイミングが非常に限られるので、早朝5時から行う受粉作業がとても重要なんです。」雄花を手に持ち、咲いている雌花に1本ずつ手作業で受粉を行う。根気のいる作業だが、万一開いた花を逃すとそこに実はできない。ズッキーニは奇跡的なタイミングで実ができるのだ。量の増える春は、蜂の巣箱をハウスに入れ、さらに受粉の精度を上げるという。

獲れたてのズッキーニはお店で見かけるものよりはるかに瑞々しい。 毎日どんどん成長するので、朝夕の1日2回収穫が望ましいという。
受粉は1本1本手作業。朝のまだ暗いうちから、咲いている花を目視で見つけていく。この手間ひまがおいしいズッキーニを形づくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生でもおいしいズッキーニ

 元々強い味がなく食感の良いズッキーニは、スープに入れたり酢豚の彩りに使ったり、何の料理にも合わせやすい。加熱調理のイメージが強いが、奥様曰く、生でもよく食べるそうで「とれたて2、3日以内の新鮮なうちは、生野菜としてドレッシングで食べるのもおいしいんですよ。」とのこと。ちなみにご主人のお気に入りの食べ方は天ぷらか、炒め物。

 

 

 

 

 

 

 もちろんとれたてをすぐに食べてもらうのが断然おいしいのですが、取材班が試したところ、冷蔵庫で1週間ほどなら、わりときれいなままで保管ができそうでした。保存もしやすく、ズッキーニ1本を輪切りにして炒めるだけで夕食にプラス1品できるのも便利です。
 ガーリックオイルでさっと炒めて、ペコリーノロマーノチーズをかけたら最高でしたよ。