熊本の農業

おいしいイチゴ偏愛 「ゆうべに」の生まれる場所へ
鶴田 秀忠さん / 和水町 三加和地区

2022.02.28

全国でも有数のイチゴの産地である熊本県。
熊本県産オリジナル品種である「ゆうべに」を求めて
JAたまな管内、和水町の三加和地区にある圃場を訪ねました。

 

「ゆうべに」のシーズン

 毎年11月から出荷が始まる「ゆうべに」は他の品種と比べて特に12月までの収量が極めて多く、まとまった出荷が見込めるのが特徴です。11月から2月までが前半戦、3月中旬からが後半戦でまた忙しくなるそうです。大玉と呼ばれ2L以上が6〜7割を占め、Mサイズ以下は1割程度。シーズン中、イチゴひと株あたり約4パックほどの収穫が見込めます。「冬場の収穫は毎朝8時前頃、色のはっきり見える時間から作業を始めますがハウスの1列で14〜15箱が満杯になるほどたくさんの実ができますよ。」

受粉はミツバチだけでなく大きなマルハナバチだけでの受粉にもトライしているそうだ。受粉数が多すぎないように、蜂の巣箱の開け閉めや、花に対して適正な活動ができるようにバランスをとるためには熟練の感覚が求められる。
一般的なハウスの場合1~3月の前半までが一番味が良いとされる。この時季は積算温度が少ないので色づきに日数がかかる。毎日ゆっくり時間をかけて色づく分、甘さを蓄えやすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産地としての情熱と誇り

 玉名でイチゴが盛んに育てられてきた理由は「一言でいえば産地の情熱でしょうね、誇りというか。手間も作業時間もものすごいかかるし、イチゴ農家は起きてる間はイチゴと向き合うといわれるほど大変ですが、収穫期間は長いので半年間は稼ぎになる。農家の収入面ではとても大切なことですからね。」ここで育てられたイチゴはJAたまなを通じて主に中国、関西、中京、関東方面へ。各地の売り場の反応や味の評価も耳にするそうで「鮮やかな赤色で5日たっても同じまま色褪せないとか、甘くて味も濃いからおいしかったと聞くと作り手としては嬉しいですよね。」

JAたまな管内には7つのイチゴ部会があり、産地として規格や品質が安定するように常に連携を図っている。
品種の7割が「ゆうべに」、3割が「恋みのり」だそう。
JAたまな指導販売部の旭田勝己さん、総務部広報の松原愛さんと。

ひとつひとつ目で見て確かめる、熟練の目利き

 収穫されたイチゴはトラックで自宅に運ばれ、作業場の冷蔵庫で1〜2時間ほど予冷します。「常温だと傷がつきやすいため、2〜5度に冷やして身を引き締めてからパック詰め作業を行うんです。」どうしても収穫の時に葉っぱや茎に擦れたり傷がつくものもあり出荷できないものは外していきます。大切な商品の最終選別、最盛期には日付が変わるまで作業が続くこともあるそう。旬のおいしさは生産者さんの努力によって支えられているんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

おいしさを保つのは「5度以上にならないこと」

 部会長曰く、家庭でのイチゴの保存には冷蔵庫の野菜室がベスト。「5度以上にならないこと」を守れば1週間は鮮度が維持しやすいそうです。農家さんならではの美味しい食べ方は「収穫して2分以内に食べること」だそう。

「イチゴは一度色づくと、すぐ収穫する必要があってね。」過熟になると他のイチゴを傷ませることもあるため、ちぎってハウスから出すのを優先しなければいけません。なんらかの事情で収穫のずれた場合はジャム用の加工場に出すそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生産者の愛情たっぷりに手間暇かけて育てられたイチゴはそのまま食べるのはもちろん、スイーツやサラダなどたくさんのアレンジを楽しめる。熊本は手に入るイチゴの種類も多いのでぜひ近くの直売所へ。