熊本の農業

人の手とテクノロジー、「環境制御」が生み出す大玉トマト
村上 義富さん / 熊本市 天明町

2022.11.10

温暖で肥沃な土地に加えて豊かな地下水、トマトの一大産地である「くまもと」。
今回ご紹介するのは最新の圃場設備を備えたトマト農家さん、
収穫スタートに合わせてJA熊本市管内の天明町を訪ねました。

「環境制御」のハウスとは

 村上さんのハウスは、「環境制御」といってハウスの中の環境が全部パソコンで管理されています。日射量や、気温変化に合わせて生産者がどうしたいかを、あらかじめ数値を入力することでセットできるので、暑くなれば自動で遮光して、曇り空や陽が落ちてきたときは自動で陽を取り入れる、といったことが可能です。
 水やりも自動で一株あたりの水の量や、肥料タンクから水を調合して何倍希釈で与えるかの数値を自ら入力していきます。「施肥のタイミングや管理は全てパソコンが自動で作業し、追肥の手間も省けて、省力化が図れる。台風前後にビニールを張り換える事もなく、時間のロスも減りました。」

 

 

 

 

 

 

 

育てるのは「麗妃」と「麗容」の2種類のトマト

 1株ごとに個別の容器になった「ココヤシ培地栽培」と肥料袋単位で育てる「袋培地」の2種類の作り方を導入しています。「普通の泥だったら連作障害や病気が広がるけども隔離されているのでまず病気が入らない。もし病気が入ったとしても、部分ごとに取り変えれば大丈夫です。」被害を最小限に抑えるリスクヘッジの側面があるわけですね。麗妃・麗容の1年は、8月頭の定植から始まります。JAから苗を買い、ある程度大きく仕立ててから定植します。上に伸びてきたらトマトを吊るしている紐を緩めて斜めに伸びやすいよう距離を稼いでいき、10月中旬から収穫がはじまります。

大玉トマト「麗妃」の特徴 真赤に色づき大玉で、硬めで日持ちがよく、肉質 も良くコクがあり昔懐かしいトマトの風味が強く、 ほどよい酸味によりとてもおいしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土耕栽培に比べると、収穫目標値は倍。収量が勝負です。

 収穫したトマトはJA熊本市に全量出荷され、取引先の関東方面へ運ばれます。安定した収量を維持できる村上さんのトマトは契約組と呼ばれ、熊本のおいしいトマトを全国に広める重要なポジションを担っています。「取引金額は決まっているので、その分収量を出さないといけないし、万一収量が減ったら収入も少なくなる。」必然的に収穫時期も長くなる必要があるため、こういうシステムを導入して、10月の中旬から翌年の6月いっぱいまで収穫を行います。「土耕栽培に比べて、ストレスがかからずガンガン伸びていくので、それだけ回転が早く収量も上がるわけです。この施設だと年間の収穫目標は30tですね。通常は15tなので倍の計算ですよ。」

受粉は手作業で始まり、3段目くらいからはマルハナバチを入れて、蜂の手も借りて受粉が進んでいく。
1株あたりの収穫量は、大体実のなる1段あたり3つから4つ。シーズン最後には約30段、おおよそ120個くらい採れる計算。葉っぱを欠いだり、成長に合わせて摘果していき、全体の長さも10m近くになるので、横に横にと成長し、斜めにレールを伸ばして長さを稼ぐわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最新設備と省力化がもたらすもの

 環境制御による省力化の最大のメリットは、土耕栽培での時間がかかっていたルーティン作業をトマトと向き合う時間に回すことができ、手入れに集中できる環境を作り出すこと。これによって、これまでの倍以上の収量を目指すことが可能なのです。